【スイス】 言葉の力

VOICE (長期プログラム)

【スイス】 言葉の力

皆さんは、自分達の話す言葉にどれだけの力があると思いますか?

言葉は目に見えません。だから、言葉にどれくらいの力があるのかを知ることはとても難しいです。しかし、今回のスイスでの留学体験を通して、気付かせてくれました。

僕のボランティアプログラムは、知的障がい者のグループホームです。僕ら介護職員は利用者さんにとって一番身近な存在です。これがプロジェクト先です利用者さんがその日、安全に楽しく過ごせるかは、僕ら次第だと思っています。その基本が、言葉掛け(コミュニケーション)です。では、どんな事をしているのか。スイスは公用語が4カ国語あり、僕の職場はドイツ語圏ですので、基本はドイツ語で皆さん会話をします。ただ、僕が働いているグループには、イタリア語圏から来た利用者(V)さんがいます。Vさんは、ドイツ語も話せるので普段の生活は不自由なく過ごしています。同じグループにいる職員(Hさん)は、イタリア語も話せるので、二人だけのコミュニケーションの時はイタリア語でも話していると言っていました。その理由を聞くと、「イタリア語で話すと、Vさんが活き活きしている気がするの。それは私にとっても嬉しいことなのよ。」と答えてくれました。それで、VさんがHさんの言う事を聞いてくれているのかと尋ねると、そうでは無いみたいです。時には、Hさんのお尻を叩いたりしています。そこが人を相手にする仕事の難しさであり、やりがいでもあります。それでもHさんがイタリア語で話す理由は、Vさんの活き活きとした姿が、やりがいに繋がっているからだと思います。Vさんは他の職員よりもHさんのそばに近寄っていく事が多いのですが、その答えの1つが分かった気がしました。

そして、二つ目は僕自身が体験しました。

現地の友人がKさんを僕に紹介してくれました。Kさんはドイツ語だけでなく、英語、日本語も話せます。ある日、Kさんと一緒にチューリッヒに遊びに行った日です。カフェで休憩している間に、僕のカバンが盗まれました。カバンの中には貴重品もあったので、交番に行きました。幸いにも財布を拾ってくれた方が交番に届けてくれて、財布の中に身分証明書もあったので、財布は戻って来ました。(しかし現金は抜き取られていました。)

交番から近くの駅までKさんと歩いている間、僕は自分の不注意から招いた失敗とは言え、とても落ち込んでいました。僕の心の中にぽっかり穴が空いているのが分かりました。その時Kさんが日本語で「実は私も同じ体験をしたことがあるの。だから、あなたの気持ちがすごく分かるよ。今は本当に辛いよね。だけど、家に帰ってホスト家族を安心させてあげてね。」と言ってくれました。その時、Kさんの言葉に温かいものを感じました。この温かさが言葉の力だと思いました。それは決して翻訳する機械が話す音では、到底感じることは出来ません。また、Kさんはドイツ語でも、英語でも同じことは言えたはずです。でも、そうしなかったのはKさんは、僕が日本語を一番身近にしていると、分かっていたからではないでしょうか。

言葉は大切外国人同士が話をする時、英語が一番使われています。実際、ボランティアメンバーが集まる日は、みんな英語で話します。同じ国の中でも、場所によって言語が違うスイスでは、英語はコミュニケーションをする上で必要不可欠です。

しかしHさんやKさんは、英語やドイツ語に頼るのではなく「相手が一番大切にしている言語で伝えた時、その人の心に伝わる」事を教えてくれました。

帰国後、きっと僕はもう一度福祉の仕事をします。更にこれからの時代は間違いなく世界はもっと身近になります。それは福祉の業界でも言える事だと思います。ケアを必要とする方の中に日本語が話せない方も今後は増えると思います。その時、英語だけに頼るのではなく、僕もHさんやKさんの様に、ケアを必要とする方が一番大切にしている言語でコミュニケーションをし、その方の心をサポート出来る人間になりたいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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