VOICE (長期プログラム)

今だから思う、あの一年②(アメリカ)

杉田 健 さん(1971-1972 アメリカ派遣)

 

「百聞は一見に・・?」

 「お前何やってんだ、頼まれた事もしないで!」と突然怒鳴られたのは、翌日から始まる中間試験に向けて勉強をしている時でした。怒っているホストファーザーに、「明日からの試験に備えて勉強しているのですが・・」と応えたところ、「It’s your business. You should do first which you are supposed to do as a member of our family.(そんなことは関係ない。まずは家族の一員としてやるべきことをやりなさい)」と言われました。

1971年ICYEで米国に渡ったのが私の初めての海外体験でした。当時私は大変運よく大学に通うことが出来、国際関係論を中心に履修していました。英語での授業に追いつくのは大変でしたし、ましてや試験前は死に物狂いでした。確かに2~3日前にホストファーザーに庭に落ちている枯れ枝の掃除を頼まれていました。勿論忘れていたのではなく、試験が終わったら掃除するつもりでした。普段温厚なホストファーザーに初めて強く叱られ、あっけにとられた自分が状況を把握するのには数分掛りました。日本では勉強している学生に褒めたり激励したりの言葉を懸けることがあっても、家事をしないと言って叱る親が何パーセントいるでしょうか。でも学生である私が勉強するのは当たり前で、それは単に“My business”だったのです。学生である前に家族の一員であり、社会の一員であることを等閑にしてはいけないということを知らされ学んだ瞬間が「ああ来て良かったな」と心から感じた最初でした。

 「来月、私達の会に来て、日本について話してくれる?話すのは1時間位であとは質疑応答でいいから」と話しかけてくれたのは地元のカルチャークラブのメンバーの一人でした。「喜んで」と安請け合いしてしまいましたが、「さて何について話すか」を考え始めた時からが苦難の時間の連続でした。

おざなりに「華道、茶道、折り紙」などの話では満足してもらえそうもないと感じたのは、既にそのような日本紹介の本や写真集をその会のメンバーが持っていることを知った時です。慌てた私は日本の両親に連絡して数冊の日本に関する本を大至急送ってもらいました。試験勉強さながらに何冊かの本を読み、考えに考えた結果のテーマが「島国根性」についてでした。当時米国で様々な生活習慣や考え方の違いを感じる機会が多々ありました。でも日本との比較においてどちらが良いとか悪いとかは言えません。ここで大陸と島国という背景から比較分析すると、色々な事の説明が付く事を知りました。私の話した内容については紙面の都合上割愛しますが、あれほど真剣に日本について学び考える機会は、自分が渡航しなかったら無かったかもしれないと思っております。

 

s-KenLive「百聞は一見に如かず」とは昔から言われていることですが、現在に至っては百聞どころか“万聞”さえ可能です。インターネットで興味あることのキーワードを入力すれば読み切れないほどの記事と、見きれないほどの写真が表示されます。ではネットサーフィンにより得られる情報は一見に値するでしょうか。世界は益々ボーダーレスに近づいていますが、異なる歴史を背景にした海外の人達を知り理解するには、自分がその中に入って生活してみる以外無いと言えましょう。同じ日本人同士でも考え方や価値観が違うのですから、外国も対象の地球人になることは容易ではありません。でも「海外」を五感で学ぶという事が、人生において自身の考え方の幅を広げ、懐を大きくし、そして地球人になる第一歩であると確信しています。また私自身、誰にでも体験を通じて学んだことを少しでもお伝えできる機会があった時、ICYEの一員で良かったなと感じる瞬間です。

 

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